「キリンを作った男 マーケティングの天才・前田仁の生涯」を読んでみました。
ハートランドビールに始まり、一番搾り、氷結などのマーケティング手がけた、前田仁さんのキリンでのサラリーマン人生をまとめたものです。
この30年くらいで、酒類の市場も商品も激変しました。飲むのが専門の私でも実感できるレベルです。この激変の中で、キリンの看板商品のマーケティングに関わり、ヒット商品を手がけていく様子が伝わる本です。
前田さんの凄さはもちろんのことながら、キリンという会社の凄さも感じることができる内容です。
この本ってどんな本?
こんな方におすすめの本です。
・ビール業界のマーケティングの雰囲気を知りたい方
・プレーヤーが少ない市場のマーケティングの実情を知りたい方
・キリンのファンの方
ハートランドに始まり、一番搾りや、酎ハイの氷結など、今のキリンの定番商品が、どのような時代背景で生まれたのか?競合はどんな動きをしていたのか?この本はビールメーカーのリアルな事情を知ることができます。
日本国内の大手ビールメーカーは、国内では片手で数えられるくらいの数で、その数少ないプレーヤーが、しのぎを削る世界なのですが、この争いと商品開発能力のスピードが描かれているのですが、圧巻です。
この本はハートランドの開発から始まります。
ところでハートランドって知っていますか?
緑の瓶の、外国ビールのような外観をしているのが、
キリンのハートランドビール。
私は、このビールのファンなのですが、コンビニでビールを調達する人は、ハートランドと言われてもピンとこないかもしれませんが、大きなスーパーとかではこのビールは手に入りますので、ビール党の方には一度飲まれることをお勧めします。
1980年台後半に生まれたビールで、スタンダードなビールの味わいがあります。市販のビールは缶が大半ですが、たまには瓶ビールを飲むのもいいもんです。
このビールは当時のキリンの主力商品のラガービールだけでは、そのうち対応できなくなる未来が来ると考えて、始められたプロジェクトだったとのこと。
その後、50歳以上の方なら分かると思いますが、アサヒのスーパードライが、日本のビール市場を一気にかっさらい、このスーパードライが日本のお酒事情を複雑になるきっかけとなり、その後、価格破壊とビール狙いの酒税で、税金の安い発泡酒や第三のビールが生まれていくのですが、このあたりの激変っぷりがよくわかる内容になっています。
お酒が好きな50代以上に、是非読んで欲しい本です。
読みやすさのイメージ
300ページ強の分量です。
3〜4日くらいで読めると思います。
分厚い本です。実際のお話なのですが、ビジネス小説を読む感覚で読めると思います。
私はスイスイ読めた印象があります。
この本のポイントなどなど
ビール棚がよくわからない
この本を読んで、改めてこの30年くらいの、ビール系飲料を思い返したのですが・・・今のスーパーのビール棚は、訳がわからないです。
50代以上の方には、分かって頂けると思いますが、
発泡酒が出たての頃は、もの珍しさもあって飲んでいたのですが、酒税の基準がどんどん変わっていって、酒税をかわすために、税金がかかりにくい配合のビール風のお酒が増えて・・・・そのうち何を飲んでいるんだ?という気になった方も少なくないと思います。
実際、今は第三のビールで止まっているのか?第四世代があるのか?ビール棚を見てもよくわかりません。ビールだけは価格が一段上なので、判断がつくのですが、どれを飲んでいいのやらという感じです。
こんな中で、商品開発をやっている、ビールメーカーの苦悩が感じられます。
ビール業界のマーケター
ビール業界のマーケターというのは、特殊な世界だなと感じました。
凄まじい金額が動く大きなマーケットなのにもかかわらず、競合相手が異常に少ない。作った商品をスーパーや酒屋に売る方式で、実際に飲む人に売らないにもかかわらず、売り上げや商品への反応が、リアルに伝わりやすい。
これって、結構珍しい業界だなと思うんです。
競合を正確につかむことも難しく、実際の商品の反応も感じにくい。
こんな業界の方が、はるかに多いと思うのですが、ただ、わかりやすい分、勝ち負けも明確になるんだなと感じました。負けた時の言い訳がしにくい・・・
常に勝ち負けの評価と隣り合わせのスリリングな世界感が、読み取れます。
特殊な世界ではありますが、他の業界のマーケターの方にも参考になるのでは?と思いました。
ではでは。