「運命の絵」を読んでみました。
この本ってどんな本?
絵画エッセイを書かれる中野京子さんが、過去に描かれた西洋画をピックアップして、その絵について、どのような絵なのか、その絵が描かれた歴史的背景や作者についての情報を紹介されている本です。
昔に描かれた西洋画を鑑賞した時に、基礎知識の無い私などは、正直大半の絵が「この絵は一体なに?どういう状況?」となってしまうのですが、この本は、まず何が描かれているのか、なぜこの絵が後世に残り、アートファンから評価されているのかを解説してくれています。
西洋画は日本画と比べると、特に宗教画であったり、神話を描いたり、時代を描いたりと、世界史と西洋文化の知識が浅いと、意味がわからなくなりがちなのですが、エッセイ調の軽い感じで解説をしてくれているので、分かりやすい内容になっています。
当然、全ての西洋画をカバーしているわけではありませんが、少しずつでも西洋画の教養を深めたい方にはおすすめの本です。
この本をオススメしたい方は?
・西洋画は訳がわからないと思っている方。
・西洋画の描かれた背景や文化や歴史を学びたい方。
・西洋画を学ぶ導入本を探している方。
この本のポイントなどなど
素人になじみのない絵
西洋画になじみのない方、私もその部類ですが、この素人レベルで知っている絵といえば、モナリザ、最後の晩餐、ヴィーナスの誕生、ひまわり、睡蓮。こんなとこでしょうか?このあたりの絵は、この本には出てきません。正直知らない絵ばかりでした。
この知らないことがプラスに働いて、素直にこの絵は一体何を描いているんだろう?素朴な疑問を持って絵を鑑賞し、その後に何を描いたのか、どのような作家さんが描いたのか、その時代背景はなんなのかを解説してくれています。
基礎知識が少なくてもOK
一般教養として西洋画を知っておこうと思い、西洋絵画関係が学べる本を読むと、通常の欧米の世界史の知識と、美術史の知識を求められるケースが多いです。印象派とは、とか、ミケランジェロとは、とか、どうしても知識先行で、学校でのお勉強をしている感じになってしまっているのですが、この本はその心配は不要です。
シンプルにこの絵は一体何をしているのか、なんでこんな絵を描いたのか、などの紹介とエッセイとなっているので、美術史の流れを知らなくても、紹介された絵の知識が得られる内容になっています。発表された時の当時の評価などの解説もあり、その時代の受け止められ方を知れるのも、楽しいところです。
絵のサイズ
西洋画になじみがない方が、西洋画関係の本を読む際に、あまり注目しない部分だと思うのが、絵のサイズです。この本は全ての絵にサイズが書かれています。本に掲載される場合は、当たり前ですが見やすいサイズに縮小されていますので、どの絵もほぼ変わらないサイズと誤解しがちなのですが、幅1m前後の絵と、幅7mの絵では、実際に見た場合のインパクトが違います。
この絵が、このサイズで、当時のギャラリーなどに展示されていたら、それはさぞかし強烈な印象を与えただろうなと感じる絵も、多く掲載されています。西洋画を見る上では、絵のサイズをイメージすると、当時評価されたりされなかったりの情報の、イメージが少しはつきやすくなるかもとは思いました。
興味深い何かに当たります
詳しくは本書を読まれることを、お勧めしますが、いくつか印象深い内容があったので、メモ書きとしますが、ポール・ゴーギャン、ジョージ・フレディレック・ワッツの二人の作家は無茶苦茶な人生で、それはどうなの問いかけたくなる生き様でした。ヒエロニムス・ボスの絵の世界観は訳がわからなくて不気味で、ルーベンスは本当に絵が上手な方だったんだなという印象で、ローザ・ボヌールの描く馬はものすごく格好いいと感じました。
このジャンルの本を読むと、どの絵が欲しいかな?と妄想するのですが、今回はダントツでローザ・ボヌールの「馬市」です。この絵は、幅506cm、高さ244cmと巨大な絵で、アメリカのメトロポリタン美術館にあるそうですが、一度、現物を見たいなと思いました。
この本の読みやすさのイメージ
200ページくらいの内容です。
3〜4日程度はかかると思います。
20弱の細かい章立てで構成されている本です。
一日に少しずつ読んでいくスタイルでも、問題なく楽しめます。
今も残る絵には、色々なドラマが詰まっていることを感じさせてくれる本です。
ではでは。