近代の歴史はお金と無縁ではいられません。
近代の歴史は大規模な戦争の歴史です。
長らく戦争をしていない日本の借金が膨大すぎると思ったことありません?
国家とお金の関係は切っても切り離せません。
そして戦争では、膨大なお金がかかります。
戦勝国は得られるものが多いので、経済のダメージは少ないようですが、敗戦国や戦争が長引くとなると、経済面のツケは大きくて、日露戦争の借金を日本が返済完了したのは1986年。
本当に、戦争というのは、その後の経済をめちゃくちゃにするもののようです。
この本は、近代の戦争と国家の財政をメインとした、近代世界史の本になります。
普通の世界史ではなかなか知ることのできない、戦争と財政の関係を知ることのできる、興味深い一冊です。
目次
序章_国の借金はなぜ減らないのか
第1章_「戦争国家」オランダの財政革命
第2章_財政=軍事国家イギリスの興隆
第3章_商人が作った「帝国」システム ハンブルグとロンドン
第4章_ディアスポラの民が世界を縮めた
第5章_手数料と電信の世界史
第6章_恒常化する国家の財政赤字
終章_成長の世界システムが終わるとき
この本の内容拾い読み
政府の公的支出の増大化
「日本は公的支出が多い国」報道なんかを見る限り、世界でもダントツに支出が多いと感じるかもしれませんが、先進国の中では公的支出の対GDP比を見ると、決して日本だけが公的支出のダントツに多い国ではないようです。
2016年の公的支出の対GDP比だけを見ると、日本は約25%、フランスは30%超えです。イタリアやドイツも日本より高い水準になります。
第二次世界大戦以前であれば、公的支出の増大の原因は、戦争の費用だったようですが、第二次世界大戦のあとから、どの先進国も公的支出が一気に増えてきます。原因は社会保障費の増大が主な理由のようで、社会保障費はかかり始めると恒常的なので、簡単に減らせないのだとか。
どの国も、先進国の社会保障費の問題は頭の痛い問題のようです。
個人レベルですが、せめて健康だけでも大事にして、医療費の削減に協力したくなります。
失われた30年の実態
Csaba NagyによるPixabayからの画像
バブル崩壊後の1990年代初頭から現在までの期間を指す言葉で、経済の低迷や景気の横ばいが続いている状況のことです。
日本経済のパワーの無さを示す事実として、2020年の東証一部の株式時価総額よりも、GAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Maicrosoftの5社)の合計の株式時価総額の方が多くなったことが、よく取り上げられますが、ただ、このGAFAMはどれもIT系であって、無形資産が多いことが特徴なので、評価が難しいのも事実なようです。
この5社で日本を圧倒したというのは、キャッチーなワードではあるのですが、「もう日本経済は終わり」などと思わずに冷静に内容を見ることは大事なことだなと感じます。
終わりに
この本はオランダの覇権からイギリスの覇権、そしてアメリカの覇権を握るさまが、戦争と財政の観点から書かれています。
改めて戦争にはお金がかかって、どの国も戦争が経済に与えるインパクトは、どちら側に振れても影響が大きいということがよくわかります。
普通の世界史では戦争の起こりは学びますが、現実として戦争には、お金が必要なんだなということを改めて感じます。
ではでは。