【現代日本の画家の世界】完売画家

「完売画家」を読んでみました。

この本ってどんな本?

画家の中島健太さんが、画家として絵を描いて生計をたてている現在の状況と、そこに至るまでの試行錯誤を書かれた内容が紹介されています。画家という職業は知っていても、この業界では、具体的にどのように稼いでいるのかを知ることができます。

完売画家 [ 中島健太 ]

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この本をオススメしたい方は?

・画家の世界を知りたい方
・美術、芸術系の学校に通っている方、進学しようと思っている方
・芸術をビジネスにしたい方

この本のざっくり紹介

|絵を描いて生活するのは難しい?|
この本、最初は作品が数点並びます。
著者の作品で、綺麗な写実的な作品です。私に金銭的な余裕があったら欲しいなと思える絵です。
で、このフレーズから始まります。

『絵描きは食えない』

この強烈なワードからスタートするのですが、日本でプロ画家として生計を立てているのは、30人から50人くらいだそうで、著者が美大生のときに教授から『絵描きは食えない』と言われていたそうです。

世の中に美大や美術系の学部はたくさんあって、毎年たくさんの卒業生を出していると思うのですが、現役で絵を描いて生計を立てられる人は、30人から50人くらいだという、このデータで判断するのならば、生計を立てられる絵描きさんは、奇跡に近い存在に見えてきます。

|絵を売るということ|
美大では絵の売り方は教えてはくれないそうで、指導する人達がそもそも絵を売って生計を立てたことが無いのが理由の一つだそうです。

日本国内での販路について書かれていて、画廊やギャラリーからの販売、百貨店からの販売、あとは独自路線の3択とのこと。このご時世なので独自にECサイトを作って売ればいいのにとも思ったのですが、サイトで相場よりも安い価格で売っている場合に、人気が出てきたから画廊や百貨店で売りたいと思っても、ここで売るには手数料や場所代などを組み込む必要があるので、ECサイトと、画廊や百貨店での販売価格との差がつきすぎる可能性が高いとのことで、そうなった場合は3択のうち2つのルートが使えなくなるとのこと。確かにこれはこれで販路が広がらない。難しいです。

|国内最高のプレーヤーの場合|
画廊や百貨店で売るときには、作家の取り分は約3割とのことで、一枚200万円くらいの絵を、年間50枚描いて、一億円の売り上げになり、そのうちの3割が取り分なので、年収3000万円。このあたりが国内の最高峰クラスとのこと。

年収3000万は凄いですが、奇跡レベルの絵描きさんのクラスの到達点としては、少ない気がします。寿命は違いますがプロアスリートの方が稼げている気がするのは私だけでしょうか?

年間50枚描くのは相当なスピードが必要で、単純計算で一週間に一枚ペース!勝手なイメージですが、画家さんは絵一枚を数ヶ月で一枚描き上げるぐらいのイメージだったのですが、この本を読むと生計を立てている画家さんの作業イメージが変わってきます。芸術家というよりはイラストレーターさんなどの方がイメージに近くなってきます。

|画家を断念する理由|
画家で生計を立てようと志す人も、売れなければ30才くらいで断念してしまうそうです。「あーそのくらいの年齢が、自分の将来を考え直す時期なんだなー」と思っていたのですが・・・

真相はもっと物理的な理由で、売れないと描いた作品が家から出ていかないので、絵が居住スペースを圧迫し始めて、そのうちテトリスのようにスペースを作りながら生活し、さらに居住スペースが無くなると、生活も創作もできなくなる・・・これが全ての理由ではないと思いますが、それにしても断念の理由が怖すぎます。

|興味深い謎の世界|
絵を描く才能だけでは、簡単に生き残れなくて、プロデュース能力、マーケティング能力、セール能力が必要ということを感じられる本でした。一般には知られない、画家の世界を垣間見ることができる、興味深い本でした。オススメです。

私の好きな美術マンガが「ブルーピリオド」なのですが、この「完売画家」を読んでからブルーピリオドを再度読むと、少し見え方が違ってきます。こちらもオススメです。

ページ数と読みやすさのイメージ

200ページ強くらいの内容です。
読みやすい本だと思います。1〜2日程度で充分読み終えることができると思います。

絵を描く才能だけでは、簡単に生き残れなくて、プロデュース能力、マーケティング能力、セール能力が必要ということを感じられる本でした。一般には知られない、画家の世界を垣間見ることができる、興味深い本でした。面白かったです。

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