「ムンクの叫びが100億円で取引」
この本は過去から現在に至るまで、美術と経済の関係についての本です。
「一流の芸術家が芸術性が高い作品を作っていけば、経済的に勝てる(儲かる)世界では無い」ことがよくわかります。
本当に歴史的に人気のある絵は信じられない金額がつきます。
この歴史的に人気のある作品を作った、有名な画家たちであっても、現役時代は全く売れずに経済面で苦しかったり、大口の顧客のお抱えになったりと、経済の面では苦労した有名画家も多いのだそうです。
本のタイトルの通り、美術と経済の関係が知りたい方にもおすすめですが、美術の歴史、美術館との関係、贋作などについても学べる内容になっています。
この本ってどんな本?
300ページ弱のページ数です。
全7章から構成されています。
読み終わるには4〜5日くらいで読み終わるかと思います。
モナリザに金額はつけられるの?
レオナルドダヴィンチ作のモナリザに金額はつけられるのか?
今も価格はついていませんし、多分この先も金額がつくことがないでしょう。
理由は売りに出さないから金額がわからないというシンプルな理由です。
モナリザを所有するルーブル美術館が、モナリザを手放す可能性がほぼ皆無なため、市場価値は今後もつかないんだと思います。
ただ近年、多分ダヴィンチ作と思われる作品が、オークションで510億円の値がついたので、少なくとも最低ラインはこの金額以上とはなりそうですが、少なくともダヴィンチ本人が存命の頃には、自分の描いた絵に、この価格がつくことはなくて、記録として残っている報酬や仕事内容を見ると、ダヴィンチ本人は、お世辞にも裕福な暮らしではなかったようです。
浮世絵ってどんなものだった?
日本発のアートで海外で大人気の浮世絵。
2017年のオークションで葛飾北斎の浮世絵は、1億380万円で落札したそうです。
日本のアートとして世界中の美術館が所有している浮世絵ですが、そもそも浮世絵は肉筆画と版画の2種類があり、この版画については、現代の雑誌のような印刷物の扱いで、当時は今の価値で一枚数百円程度だったようです。
同じものが量産できる版画は商業性が強くて、イメージとしては現在のデザイナーの仕事が近いのかな?と思います。その中で葛飾北斎は、浮世絵作家の中でも肉筆にこだわりを見せていた作家のようです。
しかし・・・1億380万円の価値とは。
日本は美術館が多い国
日本には諸外国と比べて美術館がたくさんあるそうです。
全国美術館会議という組織に所属しているだけでも、公立、私立合わせて400棟弱があって、この会議に所属していない小規模なものも入れると、2000棟程度の美術館があるとのこと。
美術館は作品の収集も行うので、作品の購入費用がかかるのですが、そのほかにも施設の維持費もかかり、東京都現代美術館は年間維持費が数億円かかるそうです。
建物の規模などにもよりますが、税金などの投入が期待できない公立美術館でない場合は、長い間の維持管理については苦労しているところが多そうな気がします。
少し深読み
美術と経済の関係は切っても切り離せないもので、美術が経済を生み出せないと、作家が食べていくことができない、画材などの資材が買えないということになり、結果として経済を無視しては成り立たない世界です。
美術が経済を産むにあたり、歴史的には有力者のお抱えになったり、顧客の依頼に忠実な作品を作ったりと、自分の作りたいもの作っているだけでは難しい世界なんだなと感じました。
画家が経済の追求を強くしていくと、絵を描くデザイナーとの線引きが難しくなり、やりたいことと美術のバランスが難しくなりそうです。
美術の世界で経済的に自立したいと考えている方は、この本に書いてある知識は知っておいた方がいいかなと思います。過去の有名芸術家も経済で苦労しているケースは多いですし、現在の美術の経済の様子も学ぶことができます。
ちなみに全く美術に造詣が無い私でも、面白い本でした。
ではでは。