2014年サントリーの社長交代の記者会見。
2014年の経済の大ニュースでした。
同族経営のオーナー企業だったサントリーに、外部から社長を招聘するという経済界のビッグニュースです。
しかも外部から招聘する社長は、当時ローソン社長の新浪さんで、その数ヶ月前に1兆6千億円でアメリカの蒸留酒会社を買収するという、驚き情報満載の記者会見でした。
なんで?
どうして?
当時は疑問符だらけでした。
この本は、現サントリー会長の佐治信忠さんのインタビューをまとめたものになります。
外部から見て疑問符だらけの当時の決断の内情が語られます。
非上場企業ということもあり、巨大企業でありながらもベールに包まれているサントリーを知る一冊です。
目次
1章_日本一、運の良い会社
2章_偉大な父の背中
3章_卒業論文に記した夢
4章_商人と学者の血
5章_新浪社長誕生の裏側
6章_非上場企業の光と影
7章_サントリーを継ぐ男
8章_佐治信忠の経営論
この本の内容拾い読み
新浪社長誕生
2014年サントリーの社長交代の記者会見。
社長を打診していたのは、新浪さんがローソン社長在任中の2010年だったそうです。
人柄が理想的で海外で勝負できて年齢的にも若くて・・・などなど、条件的にベストだったことと、社内からの内部昇格については、同族会社であることもあり、サントリー社員の中に創業家以外の人間に社長を目指す人がそもそもいないということもあったようです。
とはいえ、巨大企業であり、同族会社の社長を引き受けるというのは、大きなプレッシャーなのだと想像するのは難しくないのですが、日本国内でこのポジションを受け入れられる人は何人もいないんだろうなと感じます。
ビール事業
サントリーのビールといえば、プレミアムモルツ。
華やかな香りがして美味しいビールです。
飲みに行ってもプレミアムモルツを置いてある店はかなり多いです。
昔はどの店もスーパードライだったものですが、今はプレミアムモルツ一色の様相にも感じます。
日本で大型のビールメーカーは4社、キリン、アサヒ、サッポロ、そしてサントリー。
サントリーのビール事業は意外にも黒字化には縁遠く、1963年のビール事業の参入から45年の間、赤字続きだったのだそうです。
意外です。普通なら45年の間赤字であれば、事業見直しのメスが入ってもおかしくないのですが、非上場企業ならではです。上場していれば株主からの圧力に耐えられないと思います。
結果、プレミアムモルツが生まれたわけなので、消費者からすると「よく続けてくれた」なのですが、ビール事業への執念を感じます。
寿不動産
サントリーという企業を見る上で気になるのが、巨大なオーナー企業であるにもかかわらず、株はどうなっているの?という点です。
サントリーは寿不動産という、創業に関わる三家が90%以上の株を所有しているのだそうです。
零細企業であれば、家族で持ち合ってでもイメージが湧きやすいのですが、サントリーは巨大企業です。ちょっと想像がつきません。
創業家が大半の株を所有することで、経営の安定を図っている間はいいのですが、大量の株を持っていて亡くなった場合は、相続税がサントリーの場合は莫大な額になります。
過去に寿不動産の筆頭株主の方が亡くなられたときには、株が同族以外に分散しないように、サントリーの公益財団法人に寄付する形で処理したのだそうです。
サントリーは非上場のメリットを上手く使って経営しているとのことなので、将来的な株の管理をどうしていくのか?これはこれで大変そうです。
終わりに
サントリーという日本有数の巨大企業は、一般消費者に商品を販売している企業にも関わらず、非上場ということもあり、大胆な行動を取ったり、内部がよく見えない印象だったりと、有名だけど謎の企業イメージがありました。
このインタビューでまとめられた本を読むと、本当にシンプルな内情が見えてきます。謎なイメージがかなり解消します。このシンプルさを維持させることは大変なのでしょうが・・・
サントリーのここまでの成り立ちと、今と未来について語られたインタビューになっています。面白い本でした。
ではでは。