「コンテナが海上輸送を一気に変えた」
現代の海上輸送はコンテナ無しでは語れない世の中になっています。
コンテナは知っていても、普段の生活でコンテナ船を見る機会は少ないので、いまいちピンとこないかもしれませんが、現代のコンテナ船はとんでもない大きさです。
Youtube動画でコンテナ船を検索すると色々な映像が出てきますが、このコンテナで運ぶシステムが生まれたのは、1950年代という近代!
鉄の箱に荷物を入れて、それを丸ごと運ぶ。
たったそれだけのことなのですが、一気に海上輸送の世界を変えてしまいます。
近代に生まれたこのシステムが進化していく様子がこの一冊に詰まっています。
450ページの重量級の本で(本編は380ページであとは参考文献の原注)読み切るには一週間は必要になると思います。じっくり一冊と付き合いたい方にもおすすめです。
この本の内容を拾い読み
現在のコンテナ船の姿
1950年代のコンテナはアルミのフレームに木の床がついた小型の箱だったそうですが、時代が進むにつれて全面を金属材料で囲まれた形になります。
この写真のように現在は、そのコンテナを専用の超大型船に乗せて運ぶ時代になっています。現在は2023年ですが、1950年代から70年後の姿には到底思えないほど、恐ろしく早いペースで進化を遂げています。
海上輸送はできるだけまとめて一気に運び、時間をかけずに荷物を下ろして積んで、すぐに次の港に移動することで、輸送コストを下げる。というのが基本となります。
コンテナが発達する前の海上輸送は高コストで、なおかつ時間がかかり、港の作業者が荷物を盗んでいくことも多々あったようで、不安定な輸送方法だったようです。
コンテナという経済合理性を追求した形が、今のコンテナ船の姿になるのですが、凄まじいスピードで、コンテナ輸送が進化していく様子が描かれています。
港も重要
船だけではコンテナのシステムは成立しません。
コンテナが生まれるまでは、船の貨物スペースの隙間を作らないように、どのように荷物を積んでいくのかが、港で荷物を扱う職人の腕の見せ所だったようです。
さらに、港自体にも荷物を広げて置くスペースも大事で、その荷物の船への積み下ろしは、人海戦術で運搬する方法で行われていたそう。
なので、大きな港の場合は大量の人員が必要とされて、多くの人が働くということは、港での作業者や、それを支える飲食やサービス業など、港にはたくさんの雇用があったようです。
ところがコンテナが進化していくと、港での省人化が進み、昔の賑わいからかけ離れた様子になっていったそうですが・・・
とはいえ、港町や港を抱える都市が盛り上がりを見せるためには、コンテナ輸送に対応した港に進化する必要があり、商業港として発展していくためには、写真のような大型クレーンの設置や、大型のコンテナ船が横付けできる港を作ったりする必要があります。
そのために、都市が港に大型のコンテナ船が港に横付けできるように浚渫工事を行なったり、広い港の再構築を行なったりと、投資を行わないとコンテナ船が寄港してくれなくなる可能性が出てくるので、商業港を目指す都市は莫大な金額での投資がかかります。
ただ、投資をしたからといって長期に渡って港を利用してもらえるかは別の問題で、投資を回収するために船会社への誘致合戦の様子も激しいものがあるようです。
さらに、港から先の輸送手段などの整備も必要で、鉄道の敷設や道路の整備など、港を発展させるために都市が公共事業に投資をしなければならない面も描かれています。
終わりに
コンテナ輸送が主流になっていく歴史が書かれた本ですが、主流になっていった理由はいくつかあると思いますが、荷主の信頼を得られたことは重要だったようです。
昔は荷物がコンテナに入っていないことで、港の作業者が荷物を盗んでいくことも多々あったようで、荷主からすると鉄の箱に密閉された状態で運んでくれるコンテナは画期的なシステムだったんだろうなと思います。
この一冊で、近代の海上輸送の進化と、経済の進化が見える内容になっています。
読み応え十分の一冊でした。
ではでは。