「お魚ビジネスってどうなっているの?」
「この世界は昔から変わらないんじゃないの?」
漁師さんが早朝に漁に出て、
漁港に降ろして、
市場で飲食店や魚屋さんが買って、
飲食店やお店に並んで、
我々が買って食べる。
一般的には昭和から全く変わらないビジネスモデルのイメージなのでは?
本質的なところは変わっていない部分はあっても、進化し続けているお魚ビジネスの世界。
進化し続けている、お魚ビジネスの世界とともに、消費者にとって耳よりな情報、日本の漁業関係者の凄さなどを学べる一冊です。お魚ビジネスに興味がある人だけでなく、料理好き、美味しいものを食べるのが好きな人にもお勧めです。
目次
序章_世界のセレブは、なぜ日本に魚を食べに来るのか
第1章_寿司から学ぶ魚ビジネスの世界
第2章_「ファーストペンギン!」から学ぶ漁業の世界
第3章_近大マグロから学ぶ養殖の世界
第4章_神経締めから学ぶ鮮度保持の世界
第5章_サバ缶から学ぶ水産加工の世界
第6章_豊洲市場から学ぶ水産流通の世界
第7章_魚屋から学ぶ小売店の世界
第8章_居酒屋から学ぶ飲食店の世界
第9章_培養魚肉から学ぶこれからの魚ビジネスの世界
終章_世界のセレブに日本の魚を食べに来続けてもらうために
この本の内容拾い読み
近大マグロとは
近大マグロとは、世界で初めて完全養殖に成功した、近畿大学水産研究所が手がけたクロマグロのことで、凄さのポイントは「クロマグロの完全養殖」にあります。
完全養殖のマグロとは「人が育てたマグロから卵を産ませて、その幼魚を育てて卵を産ませて、というサイクルを繰り返す」ことなのだそうです。
1970年に研究が始まり、2002年に達成したのだそうで、0%のクロマグロの幼魚の生存率を、現在は40〜60%まで高めているそうです。
執念です。安価で流通する日が来ることを期待したいです。
養殖の魚は安全なの?
古い世代からすると、「養殖の魚は薬漬けだから危険な食べ物」のイメージがあるのですが、そのイメージの理由として、昔の養殖魚は薬漬けのイメージは、細菌症の治療に抗生物質が多く使われていた時代があったからだそうで、現在はエサに混ぜたワクチンを接種させるのが一般的なのだとか。
養殖は抗生物質での治療から、ワクチン予防に変わっているようです。
人の場合でも、予防ワクチンは人体への後々の影響を気にすることはあまりないですが、抗生物質を摂取する場合は後々の影響や体から抜けるかなどが気になります。
養殖のワクチン予防は、消費者イメージ的にも安心感があります。
ゲノム編集による品種改良
「ゲノム編集による品種改良をした魚介類」ちょっと怖いイメージがありますが、ゲノム編集による品種改良は最近話題になりがちな遺伝子組み換え技術とは違うのだそうです。
ゲノム編集 =自然界でも起こり得る突然変異を意図的に狙って起こす技術
この技術の研究が進んだのが真鯛で、「筋肉の増えすぎを抑える物質」を作り出す遺伝子を削除する編集を行い、従来よりも肉付きのいい真鯛を作ることに成功し、現在ネット販売されているそうです。
日本人には天然は最高で、天然は安全という風潮があるので、簡単にはいかないのかもしれませんが、安定的に経済的に流通させるには、大事な技術と思われます。
新しい生産技術「細胞培養」
「細胞培養の魚肉」ちょっと未来イメージの強い、ちょっと怖いイメージの言葉ですが、未来のお魚ビジネスには外せないキーワードなのだそうです。
「魚肉の細胞培養」とは、生きた魚の細胞を培養して増やして、可食部を得る方法のことで、生きた魚から生きた細胞培養を取ってきて、人工培地に培養液を与えておくと細胞が増えて、それを形成して魚肉を作る技術を指します。
安全性確保のためのルール作りも必要ですが、とにかくコストが高いのが問題なのだそうで、2013年にオランダで培養肉バーガーを作ったそうですが、その価格一個3000万円!
まだ、現在では一部の魚種では技術確立されているようですが、商業レベルには遠い世界のようです。
しかし、関サバや大間のマグロなどのブランド食材を大量に作ったり、絶滅危惧種の魚が食べられたり、マグロ+ヒラメなどの新たな魚肉を作れたりなどの、新たな可能性を持った手法で、お魚ビジネスの未来には無視できない技術のようです。
終わりに
お魚ビジネスの世界は、農業や畜産に比べてメディアの露出も少ないことから、よくわからない世界になっています。
この本には、流通や保存や鮮度保持などなど、現在のお魚ビジネスの情報が詰まっています。
たくさんのプロや技術者や研究者が集まっている世界ということも意外な感じがしました。
面白かったです。
ではでは。