LIXILグループの経営をめぐって、創業家とプロ経営者の争いの図式で、2018年から19年にかけての間に起きた、経営権をめぐる争いの記録をまとめた内容です。
最終的に勝ったプロ経営者側の目線で書かれた内容で、企業ガバナンスとは?企業経営の透明性とは?誰も絶対的な株式数を持たない状況での争いのリアルが記録されています。
この本ってどんな本?
こんな方におすすめの本です。
・企業ガバナンス、透明性を守るとは?
・取締役会、指名委員会、株主総会の関係性を知りたい方
・LIXILグループの成り立ちを知りたい方
LIXILの会社の起こりはINAXとトステムが合併したところから始まったようで、その後いくつかの会社を合併し今のLIXILになったそうです。巨大グループです。
当時12人の取締役中4人が旧トステム出身で、INAX出身が2人、今回の主役の瀬戸さんという外部からスカウトされたプロ経営者が1人、残りが社外取締役で構成されていたそうで、旧トステム側の意見が通りやすい状況だったそうです。
創業家が絶対的な株を抑えている状況ではなかったのですが、創業家の意見が通りやすい状況ではあったそうで、ここでプロ経営者の瀬戸さんが、創業家の意向で解任されるというところから、この話は始まります。
結果としては数ヶ月で決着するのですが、この間に発生したリアルなやりとりが記録されており、近代的な経営のあり方ということについて考えさせられる内容になっています。
読みやすさのイメージ
350ページくらいの内容です
4〜5日くらいはかかると思います。
この本に一冊集中して読むことをお勧めします。
時間が空くと関係者の関係がわからなくなるかもしれません。
この本のポイントなどなど
取締役会、指名委員会、株主総会・・・?
指名委員会?小規模の会社では聞かない制度です。
通常は取締役会と株主総会で、取締役や代表取締役が決まると思っていたのですが、LIXILグループはこの指名委員会というものを採用しているようです。
通常の株式会社は、「会社の所有者となる株主」と「経営を行う取締役会」が分離されて、株主が会社の経営を任せる形で、この2ブロックに分けられるのですが、
指名委員会設置会社は、この経営の部分を「執行」と「監督」で分離し、業務は執行役に任せて、執行側が、合理的で適正な経営を行なっているのかを、取締役会が監督して、株主の負託に応えるという3ブロックに別れる仕組みなのだそうです。
これだけ見ると、執行側は多少窮屈そうなイメージがありますが、コーポレートガバナンスの体制としては透明性が高いと思えます。
私の勤める会社は、通常の株式会社で、「会社の所有者となる株主」と「経営を行う取締役会」が分離される2ブロックのシステムで、株主が会社の経営を任せる形なので、取締役がある程度やりたい放題になりがちな面もあるのかな・・・?
指名委員会設置をすることは、良いシステムだなと思います。
ただ、今回はこの指名委員会が機能しなかったのですが・・・
システムだけでうまくいくと考えるのは甘い話なんだなとも感じました。
指名委員会は実際に機能するシステムなのか?
この本を読んでから、LIXILのホームページに入って、コーポレートガバナンスの体制図(2021年44月現在)を見たのですが、大きな3ブロックから構成される、指名委員会のシステムをとっているのですが、いろいろな小委員会がこの3ブロックの中にいくつも入っていて、これらが複雑に監視し合う感じになっていました。
時間があれば、LIXILのホームページで確認いただければと思いますが、このシステムの維持は大変そうです。
これは私の予測なのですが、このシステムは会議が多そうです。
あとLIXILでは監視を行う側の指名委員会には、社外取締役が多く採用されています。
このシステムを有効に機能させようとするのならば、監視を行う側の取締役は、社外取締役が理想だと思いますが、この社外取締役が本気で働かないと、機能しないシステムなんだなと感じました。
昔に社外取締役を迎えるのがちょっとしたブームの時代がありましたが、このケースの社外取締役はブームで就任してはいけないレベルで大変そうです。
合理的に執行役が企業を運営しているのかの判断は、監視を行う側で判断しなければならないシステムなのですが、この監視部分を社外取締役で固めた場合、実務を深く知らないであろう社外取締役が、その判断を下さなければならないということなので、その場合に適正な判断が下せるのか?
あと執行役側と良好な関係を作れるのか?
さらに株主総会で取締役の選任や解任を行うのですが、どこまで株主が理解して、取締役の選任や解任ができるのか?
色々と本当に大変そう。私の正直な感想です。
終わりに
LIXILがどんな成り立ちで、どんな会社で、どんな体制なのかが理解できる本だと思います。報道では、なんとなく揉めたイメージしかなかったのですが、イメージが変わりました。
LIXILという企業を知るのにおすすめの本です。