世の中にある色々なルール。
大きいものは法律であったり、国際間の決め事だったり、小さいところでは団体や社内のルールなど、現代社会において、たくさんのルールが身近にあるものなのですが、時代や技術革新の中で徐々に増えているようです。(廃れるルールもありますが・・・)ルールというものが歴史上どのような役割や進化を遂げていったのか?
この本ってどんな本?
一風変わった切り口の世界史です。
世界史でお馴染みの、大量の登場人物や、大量の西暦は年はほぼ出てきません。あくまでもルールの歴史なので、読み物として知識の幅が広がる本です。
全7章の構成で、色々な切り口で歴史を振り返っていきます。
1章
スポーツのルールや中世の裁判や当時の戦争のルールについてのお話から始まります。昔はサッカーとラグビーは明確に分けられてはいなくて同じフットボールというスポーツだったそうです。そこからサッカーとラグビーになぜ分かれていったのか、そこには当時の事情やお国柄の問題もあり、サッカーとラグビーのファンには興味深い解説がされています。
2章
次に信用とお金という視点から、歴史上有名なチューリップの球根一つでとんでもない額のお金が動いた、チューリップバブル。
これまた歴史上有名な東インド会社の債務や独占権などを扱っていた、南海会社を中心としたバブル、1929年にアメリカで起きたウォール街株価大暴落などの、信用がなくなることで一気に弾けるバブルについての変遷が書かれています。この手のバブルは色々な時代でいくつも発生しています。不思議と無くならない現象です。
3章
そして特許や知財についてのルールの歴史。このあたりは各国の思惑が色濃く出る部分で、国が特許手数料を欲しがるのか、産業の発展を望むのかで、その後の歴史が変わっていきます。そして技術の進化による音楽の扱いは、いまだに答えが出ていないようにも感じます。
4章
イノベーションの歴史についての章は、自動車をテーマにしていますが、イノベーションが起きると消える又は縮小する産業が出てくるのは、世の常なんだなということを再認識させられます。昔は自動車の競合は馬車だったそうで、馬車業界の仕事を自動車が奪っていく形になるのですが、成熟産業だった馬車業界とのせめぎあいでは、今となっては謎のルールがたくさん生まれます。結果的にはイノベーションとされる技術に軍配が上がっていくのですが・・・歴史は繰り返すということを再認識できます。
5章
企業の成長にフォーカスした章では、国家が企業成長のためにアシストしていくのか、放任してしまうのが良いのか、各国の試行錯誤が読み取れます。今の世の中を考えれば基本的には放任の自由主義がベターというのが一般的と思われますが、完全放任にしてしまうと独占企業が生まれてしまう危険性もあり、実際にアメリカの石油や鉄鋼などで独占状態になりかけるケースが紹介されています。
6章
そして情報のイノベーションとも言える、インターネットの登場が各所で急速なゲームのルールチェンジを引き起こしている現状についてもページを割かれています。昔とは想像もつかないスピードで情報が伝達されて、データのコピーや拡散が手軽になってしまった現在のルール作りについては考えさせられます。
7章
最後にルールの一生として、ルールは一定期間で生まれて消えていくのですが、今までの歴史を振り返り、ルールを作る際に歴史が教えてくれる、気をつけなければならないポイントや現代社会におけるルール作りについて、考える章になっています。
読みやすさのイメージ
300ページ弱のページ数です。
3〜4日くらいで読み終わるイメージかと思います。
少し深読み
どうしたって歴史は繰り返す
ルールの歴史を色々な見方で振り返った本ですが、情報の流通スピードが高速化、各技術が進化した現在では、昔とは比べ物にならないくらい、ルールが増えて複雑化しています。
昔は一部集落内のルールで良かったものが、そのうち国の枠組みが明確化して国のルールがたくさん生まれ、国際化が進むにつれて国際間のルールがたくさん生まれています。
そういった意味では、現代人はどんどんルールに縛られていく運命なのかもしれません。
ただ、世の中が進化してルールが増えたとしても、イノベーションによって生まれた技術や産業と、既存の産業とのパイの奪い合いの後に、イノベーションの波に飲まれる様子や、経済のバブルは一定期間ごとに発生している状況が、この本を読むと紹介されているのですが、改めて、「歴史は繰り返す」のだなとも再認識させられる内容でした。
面白い本でした。
ではでは。